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見たいと思ったきっかけは もちろん、フィギュアスケート高橋選手のフリー演技。
前にも書いたとおり、映画「道」については小学生の頃から知っていました。
卒業記念オルゴールの曲の選択肢にあったこと、そして家にあった映画音楽集?のLPレコード。
1曲ずつどんな映画なのか解説がついていて、主題曲は「ジェルソミーナ」だということも覚えていました。
このレコードはまだあるのかなぁ…ほかに「タラのテーマ」とかも入ってたなぁ。
映画を見てみたいと思ったのは 何年か前からだけど、
どよーんとした暗さのスチール写真に ちょっと尻込みして
なかなかレンタルに手を出せずにいました。

このたび、「テレビ大好き」のゆかりんさんが
隣駅のレンタルショップにまで借りに行って見た感想を拝見したり
借りた本に偶然この映画のことが書いてあったりして
やはり これは見なければ…!と。
遅ればせながら 先週ようやく見たけど、すぐに感想をまとめられませんでした。
じっくりゆっくり 想いを熟成させたい、それほど心に残る映画です。
未見の方はぜひ。DVDはこちら



道_c0073649_15461699.jpg
何よりも心打たれたのは、ジェルソミーナのザンパノへの情の深さ!
母親に金で売られて、力ずくで「女房」にされて、
奴隷のような扱いを受けているのに、どうして ザンパノについていったんだろう?
サーカス一座から「仲間になれ」と誘われていたのに…。

誰が見ても「足りない」はずのジェルソミーナは、足りないからこそ、
女の本能の部分が際立っていたのかもしれない。
女は、強い男に庇護されたいという本能と、弱い男を庇護したいという本能(いわゆる「母性本能」)と、
両方持っているものだと思う。
暴君極まりないザンパノのなかに ジェルソミーナはそれも本能的に「弱さ」を見出した。
誰もが見捨てるなか、彼女だけはザンパノの庇護者になろうとした。
暴力事件を起こして留置場に入れられたザンパノを ひとり迎えに行くジェルソミーナ。
この場面以降、それまで「従」の立場だったのが 事実上の「主」に逆転する。
道_c0073649_15434540.jpg


「この世に 生きている意味のないものなんて ひとつもない。
地面に落ちている この石ころにだって意味がある」

といって ジェルソミーナを励ます綱渡り芸人。
天真爛漫、ふざけてばかりいる軽いヤツだが、その反面、いつも死を覚悟している。
やめときゃいいのに、ザンパノをからかって事件を起こしサーカスを追われ、
道端で再会したときに またザンパノの激昂にふれ命を落としてしまう。
ほんとにしょーもない死に方をする…あぁ もったいないと思う。
あんなにええこと言う人やのに…
この映画のここ一番のセリフを この芸人に言わせるところ、これが名作といわれる所以?

彼の死は ジェルソミーナを完全に狂わせてしまう。
ザンパノの影の庇護者であったジェルソミーナは、ザンパノのことなんか眼中になくなってしまう。
常軌を逸した彼女を持て余したザンパノは、眠っている間に置き去りにしてしまう。
あたりに人家も何もない「道」の真ん中に。

何年か後、老いたザンパノはある海辺の町で歌声を耳にする。
聞き覚えのあるそのメロディは、ジェルソミーナがいつもラッパで吹いていた、晴れ晴れしいが哀切漂うメロディだった。
洗濯物を干しながら歌う女に その歌をなぜ知っているのかと尋ねると
瀕死の状態で町にたどり着いた気の狂った女が歌っていたのだという。
町の人たちの看病の甲斐なく死んでしまったと聞かされて、
ザンパノは大酒をあおり、夜の浜辺で号泣する。
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昔の映画には 事情説明のシーンなんかない。
シンプルなカット割りに シンプルなセリフ。
そこから どれだけのことを感じ取るか…
それは見る者の経験値、感受性によって変わってくると思う。
私はこの「道」という映画を この歳になって初めて見て、とても冷静に見ることができた。
もしかしたら、ちょっと挫折のあった20代前半に見たら号泣していたかもしれない。
いまは、この映画が教えてくれたことを 残り半分の人生でどう活かせるか、と考えている。


*******************************************************************
今日、高橋大輔選手が フィギュア世界選手権で金メダルを獲りました。
先日見たドキュメント特番で、フリーのプログラム「道」はケガをする前から取り組んでいたことを知りました。
4回転ジャンプなど高技術の技に取り組む一方で、イタリア人振付家によるドラマティックな演出をこなすのに苦労していたところでの大ケガ。
ケガをする前とした後で、プログラムに対する思い入れがどう変わったのか、番組ではそこまで詳しく描かれていませんでした。
きっと見たはずであろう映画「道」を見て彼はどう感じたのか…
取材記事・番組があれば見てみたいなと思います。
by mayukw | 2010-03-26 15:50 | ドラマ・映画


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